(3)




「カッコイイって思っただろ、いま」

「!!?」

「その顔だと図星だな」

「っ違います」

「恥かしがらなくてもいいって赤くなってるし」


ニヤニヤ


まさしくそんな形容が当てはまる某赤髪を髣髴とさせる笑みに真っ正直な自分を恨みながらこのまま引き下がるのもなんとなく癪で

大は皺の少ない脳みそをシェイクする

「ちょっと意外だなって思っただけですよ、導明寺さんが図書室で本を読んでるなんて」

お兄さんの方なら判りますけど、と口に出しかけたところで慌てて飲み込む

導明寺壱茶の前で兄の照宇と比較するような話は明凌連内では厳禁なのは例え新参者でも誰でも知っているルールだからだ

わざと本人の目の前で口にして怒らせる人たちもいるが大にはそんな恐ろしい真似はできなかったし頼まれてもしようと考えなかった

壱茶のほうはといえば耳には入らなかったもののなんとなく幼い頃から身についた感覚で気づいたらしく

眉を顰めはしたがむっつりと押し黙ったままで時間だけが経過していく


どうしたらいいのか混乱しているらしくおろおろと視線を宙にさ迷わせる大を眺めながら壱茶はそういえばと心中一人ごちる

こいつとこうして真正面から向かいあうことなんて会ってから初めてじゃねぇか

出会った当初なんてもんはなんだこの坊主って感じだったし朝比奈派とかの頭になった今もそれこそ認めもしその成長にある種の驚きを覚えてはいるが

自分の頭である東堂や石黒みたく守りはしても庇護するつもりもないしあまり深く知ろうという気もおきなかった

が、改めて考えてみれば勿体無い気もする

これまでの行動を見ていてもこいつは周りを動かすものを持っていることは確実だしもしかすればもっと化けるかもしれない

「それに」


可愛いしな

男が可愛いなんて云われても嬉しくもなんともないだろうが、小さな声は意外に長い睫にかかった前髪に触れ空中に淡く溶けていった

「あの・・導明寺さん」

髪を細い指にすくいとられ動くに動けなくて困り果てた様子の大に名前を呼んだら放してやると笑う

「知ってるだろ俺の名前」

「それは・・知ってますけど」

「いつまでも導明寺さんじゃ色々やりづらいからな、お前だって照宇と区別つかないだろ。それじゃ困るんだよ」

なにがやりづいらいのか、その心の奥底までは判断がつかなくても当の本人は口元を緩めるばかりで大は途方に暮れた眼差しで見つめていた



はてさて朝比奈大が無事授業に間に合ったかどうかは皆さんのご想像のままに





おわり

SINCE,2005.6.6









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