眠り姫の呟き







かったりぃ・・−


海千山千の生徒が通う明凌高校、その中でも一際目をひく赤い髪の大男 御堂 茜 は

教壇に立つ教師の話を右から左に聞き流しながら不機嫌に欠伸を噛み殺す


進学するわけでもなし化学なんて卒業していつ使えってんだよ


そんな事をボヤキながらそれでも何故真面目(?)に授業にでているのかと聞かれれば

出席日数が大幅に足りないらしいのを心配したウッキーこと 朝比奈 大 に無理やり連れてこられたと言うだろう

(茜本人は無理やりと主張しているが目撃者によれば大の一言に「ちっ、しゃ〜ねぇな」と嫌がりながら足取りが妙に軽かったのは余談である)



頬杖をついて舌打ちひとつ視線を斜め前に移せばそこにはスピスピ気持ちよさそうに教科書を盾にして夢をみている大の姿に

てめェは寝てんじゃねぇか!!

そう叫びたいのを我慢して(東京タワーで買った根性のロゴ入り)消しゴムを小さく切りとると茜はニヤリ口元を歪めた

どうやらこれを剛速球で大の頭にぶつける魂胆のようだがはっきり云ってお前どこの小学生だよ、とつっこめるほど幼稚である

もっともこのクラスには学校内外でも有名な不良にツッコミなんてものが出来る勇気ある一般生徒は誰一人いなかったのだけれども


俺様の貴重な昼寝タイムを奪った報いをうけやがれ


悪鬼羅刹も逃げ出すような笑みを顔面に貼り付けいざ、と振りかぶった茜だったが

数瞬の後も実行されることなくに大の安眠は守られた


「・・ヵ・ネ」


とても低く小さな呟き

それでもしっかりと聞き取ってしまった己を恨みながら顔をそむけ窓の外を眺める男を残して授業は続く








6月 1日 



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